アラキメンタリin渋谷
私が最初にアラーキーの写真にふれたのは小学生の時。
本屋でテーマごとにまとめられた写真集が六冊くらい並んでいて、
その中の女の子がこちらをじっと見つめているモノクロ写真が表紙のを
手に取りパラパラめくってみたら「いけないものを見てしまった」ような
何とも表現できない感情をもち、そっと本棚に戻した記憶がある。
もう二十歳を過ぎたけれども、未だにアラーキーの写真を見ると
小学生の時に体験したままの感情がそっと現れる。
『センチメンタルな旅・冬の旅』はアラーキー作品の中で唯一もっている写真集。
高校の図書室にあったのにはカバーは無かったから、あの真っ赤な本が偶然目にとまり、
その場で少しめくるとなんだか泣きそうな自分が居た。
で、借りようと思い図書カードに名前を少し黄ばんだカードの一番上に書いた。
現代文を選択していたので夏休みの宿題で読書感想文を書くことになった。
自分は『センチメンタルな旅』を題材として選び書き上げた。
書きながら泣いていた。完璧おかしい自分。
担当の教師からは結構好評で、嬉しかった。
それから月日は経って、卒業間近になったある日の放課後。
図書室に忍び込み、誰にも触れられる事の無かった真っ赤な本を救出すべく自分の鞄にさっと仕舞い込んだ。
それが唯一持つ写真集となる。
今でも本を開くたび泣きそうになる。
久しぶりに遠出して映画を見た。
映画はサービス精神旺盛なアラーキーがアメリカの監督に撮らしてあげていた感じ。
それでいいと思う。
写真がすでに表も裏も語っているから。
- 作者: 荒木経惟
- 出版社/メーカー: 新潮社
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