小田急線に乗り込むと目の前の青年が料理本を食い入るように見つめていた。調理の専門学校へ行くといって地方から出てきた青年。しかし秋口には学校を辞めて深夜の工場バイトをしながら本当に何がしたいのか考えている最中。昨日一本の電話。母さんからだ。学校はどう?まぁ色々教わってるよ。そう食べてみたいわね。いつかね。今週末の連休を使って東京に遊びに行こうと思っているんだけどいい?そんな会話。絶対何か作らされる。後期の授業料として振り込んでくれたお金改め俺貯金を少しおろし100均で調味料揃えておくかな。それより何を作ればいいんだ。ケンタロウとレタスクラブでカバー出来るよな。母さんそういえば何好きだったっけ?そんな事を本人が思っているのかどうか知ったことではないが、そんな男を小田急線で見掛けた。